106人が本棚に入れています
本棚に追加
このまま村を回って、ヤツを探しても良かったんだがね。
そこはどうも僕の気が乗らねぇ。
別にめんどくさい訳じゃないんだ。
ただ気が乗らないのさ。
そこで村の誰かに、彼の居場所を聞こうと思ったんだ。
村の中をちぃと見回せば、住人か誰かが一人はいる筈だろ?
村なんだからさあ。
別に僕は、シャネルやなんかを持ってる姉ちゃんや貴婦人なんかを探してる訳じゃないんだ。
ただちぃとばかし小汚い茶色のローブでも纏ったおばぁちゃんでもいればめっけもんなんだよ。
だから僕は歩いたさ。
藁や肥が、何の疑いもなく撒き散らばってる道を出来るだけ何も考えないように歩いた。
そして、錆び付いた井戸を左に曲がった時だったね。
農作業をしている者が、何人かいたんだ。
僕はそのまま、一番手前にいたおばあちゃんに声をかけたよ。
「作業中すみませんがご婦人。お聞きしたいのですが、この村の村長にはどこに行ったら会えますでしょか?」
僕は普段は丁寧なんだよ。
君なんかには隠す必要はないから素で接するけどね。
僕は仮にも神父だからな。
ごまかしも必要さ。
‥しかしだ。
彼女は、僕をジロジロと見るやいなや。
しきりに嫌な顔をしたんだ。そしてこう言った。
最初のコメントを投稿しよう!