a LADY お嬢さん

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彼女の指差す先には、ボロボロの教会が建っていた。 もとは美しかろうステンドグラスは無惨に割れ、あちこちでレンガが外れて地面一帯に転がっている。 まさにカラスがギャアギャァ鳴いて騒いでいそうな、廃屋によくある暗い雰囲気なんだが、夕方なのでお山に帰っている様子だったな。 まぁ、普通の方なら汚い教会とでも吐き捨てるんだろうけどさ、ボクから見たら、多少レトロがかったアンティークのようなもので、非常に輝いて見えたんだよ。 教会がさあ。 「結構、キレイなものですね。」 若女将が、嘘ぉという目でボクを見る。 「は、ははっ。へぇー、そう見えるのかい?入る前に眼科に行くことを進めるわ。」 「いえいえ、もうお気遣いは結構ですよ。」 「ばーか。」 「はぃ?」 「あー、いやぁ。別に?それにしても、よくこんな汚い教会に興味起こしたねー、君ねー。…あ!」 若女将がボクに意地悪く微笑んだ。    
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