~消え逝くは幼き日とともに~

12/19
前へ
/111ページ
次へ
  ―ド クン―               何かが弾けた。   それが何かも分からない内に君信は両足で地に立って駆けていた。 ソファを乗り越えて、灰皿を蹴倒して。 開かない自動ドアを無理矢理こじ開ける。 近くなのにこんなにも遠い、現実を受け入れないために。   そして。                 「うあぁぁぁぁぁぁっ!!」                ―吠えた―   出来た隙間から転がるようにして飛び出る。 アスファルトとの摩擦で剥き出しの肌に傷が付いていく。 それでも構う事無く目の前の二人との距離を縮めていった。   「がぁっ、……あぁぁぁっ!!」   刹那、目前の神楽の口から苦悶の叫びが漏れた。 血と共に苦痛を吐き出す。 その叫びすら許さないかのように再び緋純が手に力をこめていく。   ―…やめ……ろ―   神楽の体が弛緩する。   痙攣する。         やがて……動かなくなった。    
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

567人が本棚に入れています
本棚に追加