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「嘘もついたこともないようないい子だったのに…さっ!」
緋純が神楽を蹴り付ける。
衝撃に血が飛び散った。
アスファルトが黒く滲む。
「ひどいねぇ神楽…。咲耶姉ぇも……」
痛みに耐えてわずかに聞こえた母の名。
皮肉にも痛みによって神楽は正気に戻りつつあった。
迫る死の前で。
「…かあさんは……関…係……ないで…しょう………?」
搾りだしたような声が漏れる。
苦痛に顔が歪み、冷や汗が流れ落ちた。
「まだ喋れたんだ……」
心底意外そうに緋純が呟く。
首を傾げ、目を丸くしていた。
「関係?…あるわよ。……………咲耶姉ぇも双司(ソウジ)さんも私の奏(カナデ)もいなくなった!!…………私には弖虎しかいなかったのに……お前がっ!!」
再度神楽を蹴り付ける。
何度も何度も。
「あぐっ…………」
「痛い…?痛いの?ねぇ!弖虎はもっと痛かったかもね!」
緋純の瞳に涙が滲んだ。
神楽をひたすら蹴り付けながら、罵倒しながら涙している。
溢れた涙が弾け飛び、闇夜に散っていた。
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