~消え逝くは幼き日とともに~

7/19
前へ
/111ページ
次へ
喉から潰れたような呼気が漏れる。 風穴が開いたように空気が通り過ぎていく。   「恐いでしょ?辛いでしょ?苦しいでしょ?壊れちゃいそうでしょ?」   壊れたデッキのように緋純は呟く。 答えを求めず、自己完結のままただ力を込める。 神楽の口の端から涎が流れ落ちた。 瞳から徐々に光が遠ざかる。 暗い色が宿りだす。 何も映さない闇と共に。           ―世界が―          ―色を失っていく―          ―体が冷たい―                   ―もう何も分からない―       「お願い」       優しい声だった。     本当に最後。 母としての言葉。 母としての最後の言葉。                       「死んで」    
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

567人が本棚に入れています
本棚に追加