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階段を半ば転がり落ちるようにして降り、必死に神楽を探した。
―どこだ―
―どこだ!―
不意に涙腺がゆるみそうになる。
目の前で守れるはずの世界が消えていきそうにしていることがたまらなく悲しかった。
それでもなんとか堪えて歩を進めようとする。
絡み付く風にうざったさを感じ、窓の外に目をやった。
すると見覚えのある人物が目に入る。
薄い赤髪にポニーテール。
…遠くだが間違いない。
さっきも会った、そして今この場にいるはずの無い人間。
「おばさん……何で?…」
疑問が頭に染み渡る前に、その疑問は驚愕へと姿を変える。
「っ!!まさか!?」
緋純の手に握られた、やたら刃渡りの大きな包丁が目に入ったから。
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