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弾かれるように走った。
一階まで何度も足がもつれそうになりながら。
段数の多さに辟易しながら駆け降りていく。
初めて階段が煩わしいと思いながらロビーへ向かう。
もう何分も、何十分も経ったかのような感覚に眩暈がする。
それでも這うようにしてまず緋純を探す。
―思い過しであってくれっ―
君信の行き着いた考え。
それは先に神楽が呟いていた言葉と同じものだった。
―肉親だとかそんなの関係ないんだ―
―普通憎むだろ―
―何で大切なものを奪ったものを傍においておける―
―そんなの…ありえない―
「そんなの…アイツが可哀想過ぎるじゃないかっ!」
慟哭が響く。
刹那の願いはあまりにも脆く、そしてあっさりと崩れ落ちる。
君信の目に映るのは……。
地に伏した神楽の血塗れの体と……。
その体にまたがり、首にその手を掛けている…狂気を纏った朝倉緋純の姿だった。
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