~消え逝くは幼き日とともに~

11/19
前へ
/111ページ
次へ
弾かれるように走った。 一階まで何度も足がもつれそうになりながら。 段数の多さに辟易しながら駆け降りていく。 初めて階段が煩わしいと思いながらロビーへ向かう。 もう何分も、何十分も経ったかのような感覚に眩暈がする。 それでも這うようにしてまず緋純を探す。   ―思い過しであってくれっ―   君信の行き着いた考え。 それは先に神楽が呟いていた言葉と同じものだった。         ―肉親だとかそんなの関係ないんだ―       ―普通憎むだろ―     ―何で大切なものを奪ったものを傍においておける―       ―そんなの…ありえない―   「そんなの…アイツが可哀想過ぎるじゃないかっ!」   慟哭が響く。   刹那の願いはあまりにも脆く、そしてあっさりと崩れ落ちる。     君信の目に映るのは……。           地に伏した神楽の血塗れの体と……。               その体にまたがり、首にその手を掛けている…狂気を纏った朝倉緋純の姿だった。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

567人が本棚に入れています
本棚に追加