~消え逝くは幼き日とともに~

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「やめてくれっ!おばさん!」   君信は叫んだ。 目の前の赤髪の女性は髪の隙間から濁った視線を向ける。 射抜かれるような視線の強烈さに体がひくついた。 すっと首に食い込んだ、肉すら抉った指が離れていく。 白く、赤く染まった指がゆっくりと。   「………君信くんだっけ」   緋純が呟く。 なおも髪の隙間から覗く目は混沌の色を宿し、その矛先は神楽から君信へ向かう。   「見ちゃったね……。ついでだし神楽と一緒に逝ってあげてよ。友達と一緒なら神楽も寂しくないでしょ?」   「…おばさん……」   優しかった緋純はもういないのだと思い知らされる。 いや、そもそも緋純は最初からこのつもりでいたからこそ優しかったのかもしれない。 君信の中をさまざまな憶測が飛びかう。   「最後くらい母親は優しくなくっちゃねぇ……。ほら、君信くん。逝ってあげてくれる?くれるよね?親友なんでしょ?」   緋純は立ち上がりながら神楽の腹に刺さった包丁を引き抜く。   ズチュリ   肉を裂きながら血にてらてらと輝く刃が姿を見せる。   「……くっ!!」   その痛みに反応して神楽が小さく呻いた。               ―まだ生きてる!!―  
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