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気付いてからの君信の反応は速かった。
すぐ傍まで来ていた緋純さんの横を転がるようにして抜ける。
「っ!お前ッ!!」
緋純の振るう包丁が浅く君信の腕を裂いた。
だがかまわず神楽の下へと走る。
「神楽……、神楽っ!」
神楽の体を揺する。
反応が鈍い。
危険な状態であることがすぐに分かった。
君信の手がぬるりとした感触に包まれ、染まる。
金属の匂いが鼻を刺激し吐き気がする。
こつこつこつ。
近づく足音が君信の背中で止まった。
「バイバイ」
逆手に持った包丁を背中に突き立てようとして……………中途で止まった。
否、背中に刺さるはずの包丁は別の場所に刺さっていた。
深々と、突き通るほどに、君信の腕に。
君信は自分から刺されにいくことで包丁を殺した。
刺さったままの包丁は抜ける事無く腕の中に止まっている。
―ギリッ―
歯を食い縛り、痛みを堪える。
身に刺さった刄をそのままに渾身の力で体を緋純に叩きつけた。
長身の君信の体を抉るような体当たりを受け、あまりにもあっけなく吹き飛ぶ。
その隙に神楽の冷えきった体を持ち上げると、自らも多くの血を流しながら病院の中へ入っていった。
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