~消え逝くは幼き日とともに~

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  「神楽………お前」   「置い………ていけよ、……警さ…つに」   とぎれとぎれに声を出す。 ―ゴボッ― そのたびに口から血が泡だつ。 君信はまたぎりと歯を噛み締めた。   ―あと一歩―     ―届かなかった……―     「何言ってんだ馬鹿!」   「オレは……死ぬよ」   ―ドクン―   「何言ってん…だよ……」 語尾が微妙に震える。 「まだ…わからないだろ?」   とりあえずリネン室に入った。 神楽をそっと下ろして壁に背中を付けさせる。 そして自分の右腕の傷をシーツでしばった。   「痛っ……」   裂断された筋肉からの激痛に思わず顔をしかめる。 止血を終えた君信は他のシーツを裂き、神楽の止血をしようとした。   「オレの……得意教科を…言ってみろ」   神楽の声が制した。   「なんだよ…いきなり」   「いい…から」   「……国語と…生物」   「あぁ…。だから…わかる…助からない……」   ―ドクン―   「諦めてんなよ…」   感情が渦巻く。 感情が音声に、言葉に変換され、叩きつけるように言う。   「諦めてんなよ!らしくねぇよ!」   「…もう……いいんだ」   何かに絶望したような表情。 君信は胸の痛みを感じて騒めいた。   「やめてくれ…」 懇願した。 「そんなこと言うのは……やめてくれよ」 幼子がすがるような声で懇願していた。
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