~消え逝くは幼き日とともに~

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暗いリネン室の中。 二人の吐息だけが静かに流れる。 壁を背に座り込み、手を握っていた。 お互いの手が冷たかった。   「何で…こう……なった…のかな…」   咳き込みながら神楽が言う。 残された命を燃やし尽くすかのように饒舌だった。   「あの時……死ん…だのが……オレ…なら緋ず、みさん…あんな風にならな、かった、のかなぁ?」   「仮定法過去止めろよ、…意味無いぜ……」   「はははっ……、痛っ……ははっ」   二人の目から涙が流れる。 次から次へと溢れて、止まらない。 怒り、悲しみ、苦しみ。 色々なものをその涙で流していくように。 後に訪れる別れに涙を残さないようにするかのように。   二人は泣いた。   静かに、長い間。   淡い笑顔に涙の筋。 綺麗で哀しい二つの影。   冷たく冷たくなっていった。
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