オワカレ

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オワカレ

  二人のいる部屋に足音が近づいてくる。     コツコツコツ コツ コツコツコツコツ コツコツコツ コツ       コツコツ コツ 足音が止まった。   キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ やたら軋むドアがゆっくりと開いていく。 凍てついた眼が隙間から覗いた。   眼が笑う。         「みぃぃぃつけたぁ」         朝倉緋純がするりと入ってくる。 手には包丁ではなく小振りのナイフが納まっている。   「意味無かったねぇ。血の後が目印になってすぐわかったよ。あはははっ!」   手の甲を口元に当ててケタケタと笑う。 もう片方の手で弄んでいるナイフが心に痛い。   「緋純さん……」   「そろそろ死んでよ、君信くん。痛いでしょ?」   「………」   キッと睨み付ける。 緋純はそんな視線も関係ないかのように神楽に目をやった。   「死にかけだねぇ、神楽。早く死ねばいいのに」   侮蔑を込めた言葉。   「さっきので死んでればわざわざここまで来なくてもよかったんだけどねぇ。本当最後に手間かけさせるんだから……」   「っ!……おばさん、それどういう……」   心底面倒臭そうに緋純は続ける。   「気付いてなかったの……?」   ゆっくりと口を開く。                    「メールの内容に合わせて轢き逃げされるなんて『偶然』が本当にあると思う?」     君信の唇が震える。   「……まさか…」   「そういうこと」   臆面もなく告げる。 感情のはっきりしない声は死刑宣告のようだった。 いや、緋純にしてみれば多分そのつもりなのだろう。   「じゃ、死んでよ」   そうして右手を振り上げた。
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