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現実と虚偽の世界の狭間を彷徨っていた体に、ようやく感覚が戻ってきた。
重力が体に無理矢理のしかかる。
「……さて……何か食って…課題でもするか……」
学制服を脱いでベッドに放り投げ、楽な服に着替えると台所に向かった。
ふと壁に掛けられた時計に目をやる。
「もう10時……?」
つい先程のように感じられたあの出来事も、実際には3時間も前のことになっていた。
その間へ緋純さんは仕事へ出掛けたらしい。
今日はあの人は夜勤だ。
近くまで来たので寄っていたというやつだろう。
それよりも3時間も部屋でぼーっとしていた事に、自分でも軽い驚きを覚えた。
辺りを見渡し、目についたカップ麺を手に取ると封を開けた。
やかんにお湯を沸かすと、カップに注いで部屋に戻った。
部屋に戻った神楽はさっきまで付けていなかった部屋の明かりを付けた。
明かりを付けた神楽の部屋は質素だった。
飾り気がまるで無い。
部屋にあるのはベッド、机、椅子、ごみ箱、洋服ダンス、本棚………。
必要最低限のものばかりだ。
この年令の学生ならあってもおかしくない、音楽機器、テレビゲーム……いや、テレビすら無い。
本棚には漫画ではなく、小説が所狭しと並んでいる。
神楽はベッドに腰を下ろすとラーメンをすすった。
さすがに空腹は誤魔化せなかったようで、あっというまに平らげるとスープまで飲み干してしまった。
空になったカップをごみ箱に割り箸ごと投げ入れ、さっそく勉強に取り掛かった。
英語…………古典…………数学………。
深夜まで掛かって、ようやくその全てを終えた。
肩が凝った。
それにしても問い7は時間が掛かった。
もっと復習しなくては。
そう思い、何気なく携帯の時計を見た。
「ん?もう2時になるのか…。………打ち上げもあるし、そろそろ寝るか」
部屋の明かりを消し、ベッドにもぐりこんだ。
♪~~~~♪~~~。
ふいに携帯が鳴った。
「こんな時間に……誰だよ?」
常識外れの着信に苛立ちながら、神楽は携帯を開いた。
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