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しばらくの間No.5はそれに目を通していたが、中程まで差し掛かったところで口を開いた。
「概要は解った……が、しかし……」
そのまま最後の一ページまで読み終わり、No.5はファイルを閉じた。その表紙を見つめながらNo.5はつぶやく。
「当事者にとっては、重大問題かもしれないのは確かだ。だが、常識的に考えればおかしくはないか?」
問いかけられ、No.21はうなずいて同意を示す。それを確認してから、No.5はさらに続けた。
「もっとも、これだけのことで我々が動くという方が、奇妙だな」
No.5の言う通り、本来彼らは『ヒトが担当するには危険すぎる任務に従事する物』である。
今回の事件は、単なる一民間会社の社内情報漏洩未遂であり、どう考えてもそれに当てはまりそうにない。
至極当然なNo.5の言葉にNo.21は同意を示してから、言葉を付け加えた。
「でも、命令が来たってことは、それなりのヤバい事をしている裏付けがあったんじゃないですか?」
なるほど、とつぶやいてから、No.5は再び車窓から殺風景な景色を眺めやった。
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