九月二八日

7/29
前へ
/93ページ
次へ
 しばらくの間No.5はそれに目を通していたが、中程まで差し掛かったところで口を開いた。 「概要は解った……が、しかし……」  そのまま最後の一ページまで読み終わり、No.5はファイルを閉じた。その表紙を見つめながらNo.5はつぶやく。 「当事者にとっては、重大問題かもしれないのは確かだ。だが、常識的に考えればおかしくはないか?」  問いかけられ、No.21はうなずいて同意を示す。それを確認してから、No.5はさらに続けた。 「もっとも、これだけのことで我々が動くという方が、奇妙だな」  No.5の言う通り、本来彼らは『ヒトが担当するには危険すぎる任務に従事する物』である。  今回の事件は、単なる一民間会社の社内情報漏洩未遂であり、どう考えてもそれに当てはまりそうにない。  至極当然なNo.5の言葉にNo.21は同意を示してから、言葉を付け加えた。 「でも、命令が来たってことは、それなりのヤバい事をしている裏付けがあったんじゃないですか?」  なるほど、とつぶやいてから、No.5は再び車窓から殺風景な景色を眺めやった。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

473人が本棚に入れています
本棚に追加