九月二八日

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    ✳  市街地に入ると、辺りの風景は一変した。  緑一つ無い殺風景な大地から、近代的な街並みが目前に広がる。超高層ビルが建ち並び、道路には車と人があふれている。  そして、二人の乗る車の前方に一際高いビルが姿を表した。 「あれがRホテル。当面の本拠地です」 「運営資本は?」 「自称独立系です」  それから意味ありげな笑みを浮かべて、No.21は付け加えた。 「ま、それは表向きで、ダミーを加えたら全体の六十パーセント以上をMカンパニーが占めるようですが」  なるほど、と言ってから、No.5は腕を組み直す。そして、ふと口を開いた。 「ところで、宇宙港周辺だが、緑化と工業団地建設計画は、終わっているはずだが?」 「ええ。そういえば二年ほど前あの辺りで群発地震があったらしいですが、関係あるんでしょうか……。自分も変だとは思っていたんですが、何か?」 「少し気になる。それだけだ」 「一応特記事項ですね。……入ります。気を付けてください」  『二人』の乗る車は、吸い込まれるように地下駐車場へと消えていった。
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