九月二八日

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 会社側はデータの廃棄を求めたものの、話し合いは平行線をたどったため、というのがMカンパニーの言い分である。  たかがこれだけのことで、とNo.5は首をかしげた。  或いは本当に『電卓からミサイルまで』との噂を裏付ける物が写っていたのだろうか。  そこまで整理して、ふとNo.5は被疑者である女性の写真に目を落とした。  少々きつい、だが整った顔立ちの女性がこちらを見つめている。  誰かに似ている。  データを再確認しようとしたとき、ノックの音が室内に響いた。 「ブラウン捜査官、そろそろ面会に出たいのですが、よろしいでしょうか?」  扉の向こうからNo.21の声が聞こえた。  必要以上に遠回しな言い方は、盗聴器の存在を気にしているからなのだろう。  資料をまとめ、作戦用の疑似IDカードを確認してから、No.5、否、アンドル=ブラウンは立ち上がった。
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