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「こちらが有機物培養プラントです。移植医療用の皮膚や臓器はほぼこちらで賄っております」
工場の中に、はりの有る声が響く。それはどこか誇らしげで、他者を見下しているような色を含んでいた。
その声に導かれるように、初老の男性が姿を現す。彼は神経質そうに『培養プラント』の群を眺める。
まま遅れて、声の主がその後を追う。表情や態度には、自信が満ちあふれていた。
「だが、それはあくまでも医療用の域を越えてはいないのだろう? それをどうして……」
「そこで貴方のお力を拝借したいのです。博士」
言いながら男は笑う。やはりどこか他者を見下したような笑いに、博士と呼ばれた側は首を横に振る。
「私がその機密に関わっていたのは、もう一昔以上前の事だ。今さらそれを蒸し返して……」
「急所を撃たれない限り、倒れる事のない戦闘員の開発。私はそう伺っておりますが?」
今度は皮肉を含んだ笑みを、男は浮かべる。対する『博士』は自嘲気味に言った。
「すべては夢物語に過ぎない事だ。君は一体どこから……」
「第一級機密文書を、拝見しました。公然の秘密となっている『特務』開発に尽力されたとの噂はかねがね……」
「ならば私に聞くまでもない。君自身が直接資料を収集する事も可能だろう? その様子をみると」
半ば苛立たしげに言う『博士』の視界にある物が飛び込んできたのは、その時だった。
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