九月二八日

4/29
前へ
/93ページ
次へ
 大宇宙へと人類が足を踏み出した時、狭い一惑星の上を無数の国境線が横切る時代は幕を閉じ、各々の惑星が独立国家を主張するようになった。  かつてのように互いに争いあい自滅する事を恐れた人間達は、人類発祥の星テラにその昔存在した国連宜しく『惑星連合』なる物を設置し、すべてを超越する宇宙軍と警察組織を形成した。  惑星国家がそれぞれ軌道に乗り始めた頃、招かれざる弊害が起きるようになった。  恒星間をつなぐ定期船の事故及び盗難や遭難。そして長距離を物ともしない凶悪犯罪。そして未だ独立を果たせずにいる衛星におけるテロ行為。  これら事象の捜査、追跡調査は、特殊な訓練を受けた者にとっても危険かつ効果の上がらない物であった。  現在、これらの事故犯罪の調査にあたる特殊機関が、惑星連合宇宙軍に置かれている。  生身の人間にはあまりにも過酷かつ危険な任務に専任する彼らは、惑連情報局の持つ公然の秘密であった。  そして人々は彼らを畏敬と蔑みの念を込めて『doll』と呼んでいた。  それは、彼らが『生物学上の人間』ではなく、人工的に造られた亜人種であったためである。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

473人が本棚に入れています
本棚に追加