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「でも、あなたは間違いなく『ヒト』です。人間として生まれた事実がある。自分たちとは違って」
そのNo.21の言葉に、クレアは顔を上げた。
いつになく神妙な顔をしたNo.21が、そこにいる。
「自分たちがどんなに笑おうが泣こうが、それは与えられた0と1の集合に過ぎません。でも、あなたは違う」
こらえきれなくなった涙が、クレアの瞳からこぼれたた。
「ごめんなさい……お二人とも、私のこと、心配して下さっているのに……」
「気になさらないでください。……巻き込んでしまったのは、こちらですから」
それからNo.21は、万一今回のことで不利益を被ることがあったら、速やかに知らせて欲しいと、一枚のメモを手渡した。
「自分への直通回線です。第一級最高機密ですので、決して他には知られないようにしてください。特に支部長さんみたいな方には」
冗談めかして言うNo.21に、クレアは笑ってうなずいた。
そして、ふと何かを思い出したかのように切り出した。
「この間……少佐さんを見送った時、これを渡しそびれてしまったんです」
彼女がハンドバックから取り出したのは、ありふれた封筒だった。
御礼状です、と微笑みながら言うと、彼女はNo.21にそれを手渡した。
「たぶん無駄なことかもしれませんが、今度会われたら、渡していただけませんか?」
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