∬ いじめ ∬

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∬ いじめ ∬

3年生になり、想と初めて同じクラスになれた。 彼は背が伸び 元々のキレイな顔立ちに男らしさも加わり …1人でいるあの姿が、クールでかっこいい…と、 女子達の間で、徐々に騒がれ始めていた。 頭も良く、運動も出来、非の打ち所のない、女の子にとって、ヒーローの様な存在になっていった。 私の中では、ずっと、そうだったけれど… ただ理解出来ないのが、ズボンの履き方。 ワザと短足に見せる、腰辺りにベルトで止める、ズレしまいそうな履き方。 それも良い。と、 人気の理由の一つになっているけれど… 彼らしくない。と感じていた。 同じクラスになったとはいえ、喋る事もなく、同じ日々が繰り返されていた…。 見つめる…ただ、そんな毎日。 うれしい事に、彼の席は、私の斜め前の席で、授業中も難なくのぞき見る事が出来た。   そんなある日。 予想すべきだったのだ。今の彼は、どんな女の子をも虜に出来る、そんな魅力がある事を…    八尾 はるみ クラスで、最もキレイで、意地悪な女の子。 彼女に、呼び出されたのだ…   ドラマの様だと、頭のどこかで 人事の様に感じていた… 体育館の裏、彼女の取り巻き達に囲まれて 「想は私がふさわしいのよ!」 だの 「見つめるだけでも許さない!」 だの 言いたい放題だ。 私に友達と呼べる子達は居なかった… 想と出会った瞬間に、他の事など、どうでもよくなったのだ… こんなに夢中になれる「恋」を知ったら、 他の事など 二の次になる… 目立たないクラい女。 大半の人間が、気にもしない、ただ居るだけの クラスメイト… イジメが始まるのには、そう時間は掛からなかった… 彼女は言った。 「もう、見ないで」 と。 私は、止められなかったのだ… それが「理由」 じわり…と、クラス中に浸透していった。 もう「理由」何て関係無くなる。 自分より「下の者」「見下しても良い存在」が出来ると、人は簡単に変わってしまうものだ。 想は、変わらなかった。 一言も喋らないのは、始めからだし、外を見ている。 それも変わらなかった… リーダーである「はるみ」の指図で、 想の前では、何も起こらなかった。 だから、見つめた… それだけは、止められなかった…
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