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∬ スズメ ∬
想が、初めて学校を休んだ。
私は、想と出会ってから、髪を伸ばしていた。
また、彼と話せますように…そんな願掛けだったのかもしれない…
長い髪を二つに、お下げにしていた。
それを片方、切られたのだ…。
初めての身体的「イジメ」
想の存在が、そこまでに至らない「ストッパー」的役割を果していたのだろう…
言葉での嫌がらせには、耐えて来た…。
でも…彼とのつながりと感じていた「髪」を切られたのだ…
静かに、泣いていた… 声も出さず。
この異様さに、誰も気付かないのだ…
初めて「孤独」を感じた。
想…彼は今日、居ないのだ…
彼が居たから、耐えてこれたのに…
…くすくす…と、静かに笑う声が響いている。
もう、自分には、生きて行く価値さえないのかもしれない…そう思えてきた…
「スズメちゃん…」
皆が振り向いた。
私を見つめるのに忙しく、
誰も、私も、気付いていなかった…
彼、想が居た。
教室中が、静かになっていた。
「…どうしたの?何故泣いているの?」
私は茫然と、彼を見つめる事しか出来なかった…
「髪を…どうしたの?」
また、涙が溢れて来た…
想が、私に話し掛けている…!
「スズメちゃん?」
彼は、覚えていてくれたのだ。
ハンカチを取り出し、涙をふいてくれた。
そして、手を取り、切れて落ちてしまった髪の束を拾い、私を連れ出した。
途中、職員室に寄り、先生に、一週間は休むだろう事、私が早退する事を話す声がした…
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