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∬ 死 ∬
何も 考えられず。
ただ、繋いだ手に、引っ張られ、歩いていた…
そして、小さな美容院に入り、
イスに座らされ、
エプロンをかけられ、 鏡に向かっていた…
…ジャキ・ジャキ…
と、ハサミの音。
鏡越しに、彼と目が合った…
「…ここは、俺んチなんだ。母さんが美容師で…」
慣れた手付きで切り揃えていく。
「今日、母さんが…死んだ…」
「え?!」
「…ずっと…悪かったんだ…」
「…」
何も言えないでいた。
「あの日、スズメを一緒に埋葬した日…」
彼は、覚えていた。
「…母さんが…癌だと、知ったんだ…」
あの日、
泣いていた 想 …
「スズメをみつけて…
死んだらどこへ行くのだろうと、
悲しくて…泣いていた…」
母を思い、
泣いていた…
「君は…声をかけてくれたね…
…そして、一緒に居てくれた…」
「どんなに…心強かったか……」
「…し・知らなかった…」
想は、にこりと微笑み
「話してないからね…」
「!でも、名前の由来は覚えてる! ゛君を想う″ お母さんが付けてくれた…」
続きが言えなかった…後ろから抱きすくめられ…
想は…泣いていた…
あの日の様に…
肩をふるわせて…
そっと、手を重ね、体を揺すった…。鏡越しに、目を合わせて、
2人共…泣いた…。
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