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オクタスは落ち着かなかった。突然、城に招かれることになったからだ。
軍に長く籍を置く父でさえ数えるほどしか招かれたことが無いと言うのに、なぜ俺のような若造が王に招かれることになったのか。
昨日、将軍から直々に呼ばれたオクタスは、城の宴にお前も招待されているから、粗々のないように出席してくれと伝えられたのだ。
オクタス以上に驚いたのは母のチルダだった。夫がモルラングへの偵察に送られたばかりだというのに、今度は息子までもが危険な任務につけられるのではないかと思ったのだ。
「どのような任務をおうせつかったとしても、王の御前で気弱なことは申してはなりませぬ。お前はバロバの息子なのです。父の顔に泥を塗るようなことがあってはなりません」
「わかってるよ。母さん。しかし心配はいりません。王が私のような若造に直々にお言葉を掛けられるようなことはまずありますまい」
その言葉はオクタス自身に言い聞かせるためのものでもあった。
オクタスは不安を打ち打ち消しながら、城から迎えに来た馬車に従者と共に乗り込んだ。
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