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いつの間にか眠りに落ちていたオクタスの意識を元に戻してくれたのは舞台から流れる強烈な楽曲の調べだった。
舞台の上では目を奪うような妖しい踊りが演じられている。
このような席で眠りに落ちるとは、とんだ失態だった。幸い王の姿をはみあたらない。
しかし安堵したのもつかの間、オクタスに再び強烈な睡魔が襲ってきた。
この厄介なまどろみからなんとか逃れる術はないものか。
そんなオクタスを救ってくれたのは、空席だったはずの隣席に知らぬ間にか掛けていた女の存在だった。
それは例えようもない絶世の美女だった。
まだ幼さの残るその眼がまったく気がねする風もなく愉快そうに微笑みながら熱い視線をオクタスに向けている。
オクタスの頭にたちまち血がのぼったのも無理はない。
その眼の美しさ。
いや、眼だけではない。
その鼻。その頬。
そしてその愛らしい唇。
…………。
この娘が放つ圧倒的なオーラの前にオクタスは言葉を失っていた。
呆然としたこの時の顔は、余程間抜けに見えたに違いない。
女はプッと吹いたかと思うとたちまち腹を抱えて笑いはじめてしまった。
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