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あれは現実だったのか、それとも夢?
オクタスにとってはそれさえも定かではないほど記憶があいまいだった。
しかし、例え記憶が鮮明であったとしても夢であったかもしれぬと疑ったことだろう。
微かに残る記憶の断片はどれをとってもあまりにも現実離れした甘美なものだったからだ。
……そして約束……。
そう言えば何か大事な約束を交わしたような……気がする。
何の約束だったかはまるで記憶になかったが。確かに何かを言ったような覚えがあるのだ。
もし再び会えるものなら、それだけでも聞いてみたいものだ。
しかし、それは望み薄い再会の日の楽しみとしてとっておくしかない。
オクタスは天井を彩る星の模様を眺めながらそんな想いに浸っていた。
すると。
「あら、お目覚めかしら~!」
女の声が耳元に響いたかと思うと同時に、オクタスの顔を覆うようにして女の顔が突然逆さまに覗き込んできた。
オクタスは驚きの声をあげた。
それは見まごうことないあの娘の顔だったからである。
「約束はしっかり果たして頂きますよ。オクタス様」
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