遠雷

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 しかし、その平和な時代も終わりを告げようとしていた。    永遠に続くかと思われた平和の灯が、かつては東の盟主と仰がれていたボルコの王の乱心によって吹き消されてしまったのだ。    東の主教座を戴くボルコ公国は、本来なら庇護すべきはずの諸国を奸計と武力を持って侵略し、領土の拡大を押し進めていった。    西の盟主ホラングは、このボルコの暴虐に強く抗議をしたが、ボルコからの返答はなかった。    瞬く間に東の諸国を掌中に納めたボルコは、その攻撃の矛先を西の諸国へも向けはじめた。    そして、ホラングの保護下にあるモルラング王国がついにその餌食となってしまったのだ。    突如迫ってきたボルコの軍勢に慌てたモルラングの王バルサートスは、ホラングによる保護を要請してきた。    しかし、時はすでに遅かった。ホラングとモルラングの間に横たわるダーマの砂漠がホラング軍の迅速な移動を妨げた。  ホラングの援軍が砂漠を渡っている間にモルラングの主都モントロンは陥落した。    ボルコの軍勢が予想以上の早さでモントロンの城壁を打ち砕いてしまったからだ。
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