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王の命令に従って、モルラングへの偵察隊が編成された。その団長には軍の中でも最も信頼があつい優秀な士官であるバロバが任命された。
偵察隊は総勢百名。辞令を受けてからニ日後に、敷物の行商を行う隊商を装って、ダーマ南路の入口であるテンペスの砦に向かって出発した。
バロバの一行を見送ったバセルは、その足で軍の視察に向かった。バセルは今回も、娘のサリーを視察に同行させることにした。
娘とは言え、国の未来を託すことになる一粒種だ。王国のありのままの姿を見せておく必要があった。
サリーも城の中に閉じ籠っているのが退屈なのかバセルから声がかかると喜んで同行した。
娘の同行には若い兵士たちを刺激しないようにと地味な衣裳をまとわせ、顔はベールで覆わせていた。
そのベールの下にサリーは煌めいた表情を秘めていたが。それに気づかぬバセルではなかった。
その表情の真相を突き止めることも、娘を同行させる目的のひとつでもあったのだ。
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