第二章

5/5
前へ
/9ページ
次へ
俺は外を探索してみる事にした。 とりあえず、誰か人に会わないと気が触れてしまいそうだった。 俺は階段を駆け降りた。どうやらアパートは細い路地に面しているらしく、見渡しても人は見えない。 大通りに出る道を探していると、何故か、息苦しい事に気がついた。頭がパニックになったせいで、身体にもそれが発生しているのだろうか。 俺が降りてきた階段の上の方から、足音と話し声が聞こえてきた。 しばらく待っていると、紳士そうな老人と、小さな女の子が降りてくるのが見えた。 アパートの住人らしかったので、俺は少し安心した。全く関わりの無い他人にいきなり声をかけるよりは幾分自然なはず。その二人に俺は見覚えは無いし、付き合いがあったのかも定かではなかったのだが。 女の子が階段の途中で急に立ち止まり、緩んだ靴紐を直している。俺は先に降りてきた老人に「すいません」と声をかけてみた。 しかし、老人は何の反応も示さなかった。 耳が遠いのだろうか。 今度は少し声量を上げて話しかけてみる。 結果は同じ。無言で通り過ぎていった。 走ってきた女の子がこっちを向いて首をかしげたが、すぐ向き直って老人の方へ駆けていった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加