彷徨

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「ハイヒール」 みんな楽しそうに恋をしているようだった 僕は寂しく微笑んで 僕は違うよ 思春期に異性から 逃げ回った頃のように踵を返した あの時と違うのは 光輝の柱を幾つか 背負っていること それだけだ あの時のように 今でも臆病で 弱くて羞恥より 絶望の孤独を選ぶ 愚か者だ 君は経験が足りない 世間知らずだ 偉い人はみんなそう言いますが 違うと思います 人間の本質的な部分はちょっとやそっとでは変わらない 幾ら女性に 両の頬を包まれようと 眩しそうな目線に 絡まれ手 何度欲望の捌け口にされようとも 何度あなたに入ろうと 私は経験などしていない! 絵に書いた女性が好きです だって美しいでしょう 象徴の中に 愛するシーン イメージを叩き込めるから 現実は違うよ 絶えず思いが入りこんでくる こっちが疲労病床であろうともおかまいなしさ 電源を切ったりするんでしょう? わかりあってるって夢なのにおかしいね 僕は中学生の未経験のまま 魂があり肉体があり心があるソレを 絵に書いた女性だと 思いたかった そして僕の理想に絶え切れず粗野な音たて ハイヒールは出ていった
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