プロローグ

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 今日もお出でなすったんですか。お疲れ様です。  月読みに関してはほとんどお話したと思うんですがねえ。え、いくつか質問がある?  ああ、隣りが国の星読みとの関連ですか。まあ、大した違いはないと思いますよ。    それにしても、物を書くというのは大変ですね。取材のためにこんなババの所に何日も通いなさるなんて。同じような話で飽きやしませんか。  そうですね。おっしゃる通り、九つの現実の中に一つの創作を混ぜれば現実味が増しますね。九つの真実に一つの嘘を混ぜるように。  だから正確な情報が必要なんですね。  いやしかし、あなたは真面目な方だ。  普通? いやいや、そうは言ってもなかなかできることではないでしょう。知ったような振りして書いたって、ほとんどの人に違いは分かりますまい。  ああ、でもね。九つの嘘でも、一つの真実が混ざれば真実になってしまうこともあるんですよ。  そうですね。そろそろ時効でしょうか。あなたになら、お話しても良いかな。なに、事実を曲げずにいてくれそうだからね。  それに、話せなくなる前にどこかに残してみたいというのもあるかな。  今日も暑くなりそうだ。  立ち話もなんです。汚い所ですが、まあ、上がってください。      はいはい、その座布団にね。これだけ暑くなってくるとやはりイグサを編んだものの方が優しいですよ。しばらく動けなくなるからねえ。  ええと、飲み物は……。遠慮なさるものではありませんよ。長くなるからね。ほらほら、かしこまらないで。  じゃあ。隣りのハリアさんが煎れてくれたお茶にしましょうかね。    ええと、それで、どこまで話しましたか。  ああ、そうそう。あれは月読みの天文台が神の降りる場所とされていた頃のことですよ。
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