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月読みは、古くからルドナの占い師たちのものだった。十二の星の配置と光具合を星座盤に当てはめ、そこから導き出された数に月の満ち欠けと位置を掛け合わせる。
正確な位置を読むには経験が必要で、正確な月齢を知るには数算の知識が必要だった。
占い師によっては結果が違うこともざらで、人々はより的中率が高く、経験のある月読みに未来を占わせた。
作物の出来から、翌日の天気。気になる女性の気分まで。
そんな月読みの能力は血に受け継がれる。
有能な月読みの子どもを養子に迎える者も多かった。
いつかこの子が神の意思を読み解いて家を大きくしてくれる。そんな期待を込めて。
逆に月読みの血を継がない者が読もうとすると、月は水を引き寄せた。
家々を壊し人々を流し、畑の作物を枯らして病気を流行らせる。
冷たい光を放つ月を、人々は畏れ、月読みの血を神聖化した。
時は流れ、占い師たちは代替わりし、ある時、巨大な目を用いて月を観る者が現れた。
その者の読む月と星の位置関係は正確で、天災から異常気象、隣国に攻め込むタイミングまで予言してみせた。
人々は彼を持てはやし、他の占い師は衰退し、やがて認められた月読みは、カナル山の月読みと呼ばれる彼とその子どもだけになった。
彼はその目によって、神のごとき立場を手に入れた。
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