古の月

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何度も何度も揺さぶられて体の中に沸き起こる波 それに押し出されるように込み上げる嘔吐感 何度も    何度も 唇を噛み締めて 目の前に広がるその光景から目を背けるように瞼をきつく閉じて 『ぎゃぁぁああ!!』 鼓膜を引き裂くような悲鳴が木霊する 自分のモノではない悲鳴 目を見開けばワーウルフ達は僕の頭の先を見据えていた。 目を見開いて気づく ワーウルフ達とは違う細い影 頭をそらし頭の上に視線を上げれば裸の木の枝にとまる黒い影 その向こうには畏怖すら感じるほどに大きな満月 『血生臭いと思って来てみれば…子供独りに群がって…お前等にワーウルフとしての誇りはないのか…』 リン…と鈴がなるような透き通った声が響く 透き通って綺麗ながらも その声は威圧感と恐怖を齎す 絶対的な支配者の声… 夜の支配者 吸血鬼の中でも強い力を携えた者 ―ノスフェラトゥ― 『ユ…ユリウス様っこれは…』 ユリウスと呼ばれたその人は、逆行でも光を失わない深紅の瞳をこちらに向ける 冴え冴えとした 冷たい瞳を… 『こ…このガキが自分の両親を殺して逃げたので制裁をくわえていたのです!』 その苦し紛れの言葉に頭に血が上る ボクが…父さんと母さんを…殺した、だとっ?!
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