〈想ぃ〉

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10年前、私がした恋は普通の恋では終わらなかった。 あの当時の小学生にしてはマセてたんじゃないかな? 私は彼が…龍平が大好きだった。 かっこいいし、足も速い。クラスの人気者だったし、よく遊んでくれた。けど、私の周りには、他にもそういう男の子がいたはず。なのに、私は龍平じゃなきゃダメだった。 理由はよくわからない。 でも凄く彼に惹かれていた。 前にも書いた通り、私達は7人くらいの仲良しグループだった。 そして、私には「恵美」という親友がいた。小学生であれば、自分の好きな人を友達に暴露したりするのは普通の事。でも私は口が裂けても言えない理由があった。 それは、私の好きな人…龍平は、『恵美のことが好き』という噂があったから。 本人に聞く勇気もなく、私の純粋な恋心はつのっていった。 そしてバレンタインデーが近づいてきた。 私はママの指導のもと、手作りで彼のためにマフラーを編んだ。初めての編み物だったから、何回もやり直しをして、夜寝る時間も削りながら頑張った。 当日、私は完成したマフラーを龍平に渡した。でも、いつどこで、どうやって渡したかは全く覚えていない。そして私はこのマフラーを巡り、龍平と喧嘩したらしいのだが、それも覚えていない。 それを知るのもずっとずっと後のことだった。
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