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「それで、どんな夢をご覧になったんです?」
嬉しそうに苺タルトを口に頬張る主人を見つめながら、カリオペは切り出した。
「………そッ…それがさぁ…。」
アーネストはビクッとし、その拍子に口に入り損ねた苺がポトリと皿の上に落ちた。
カリオペは、気付かなかったかのように、紅茶を飲んでいる。
「…………カサンドラが、夢に出て来て…。」
アーネストは、微かに身震いし、紅茶が入ったティーカップに手を伸ばした。
これで、なぜ主人が飛び起きたのかが、わかった。
カサンドラは、アテネで類をみない程の美しい女性だが、一方で、性格が少々…いや、かなりの変わり者だ。
その彼女が、主人の夢に現れても、何ら不思議は無い。
なぜなら、カサンドラはアーネストの許婚であり、毎日この城にやって来ては、一騒動を起こして行くからだ。
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