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「…………」
世界は灰色に満ちていた。
人も、景色も、何もかもが灰色だった。
「…………そうね」
誰に語りかけるでもなく私は言葉を紡ぐ。
まるで、私がここに居ると主張するかのように。
「……世界なんて、灰色ばかりよね」
だが、誰も気付かない。
私の前を忙しなく歩いていく人々に、私の声は届かない。
「そんな世界……消えてしまえば良いのに」
だから、私が何を言おうと、誰も気にしない。
そう、思っていたのに……
「それはちょっと困るかな?世界が消えたら、俺達の旅が終わっちゃうよ」
あまりに突然すぎて、私は最初、それが自分に向けられた言葉だとは気付かなかった。というか背後から突然声を掛けられ、声も出ないくらいに驚いた。
「……あれ?なんか俺変なこと言ったかな?なぁ、ジョナサン?」
「誰がジョナサンだ。……察するにこの少女は、突然お前に話し掛けられて驚いているんじゃないか?」
振り向くと、そこには2人の青年が居た。
1人は、肩までの黒い髪を後ろで簡単に縛り、黒縁の眼鏡を掛けた、優しげな微笑を浮かべた青年。
もう1人は、長く、腰まである銀髪を靡かせ、白く陶磁器のような肌と、翡翠色の瞳を持つ、中性的な青年だった。
「……あ、こっち向いた。やぁやぁお嬢さんこんばんは。こんな時間に何してるの?」
私が2人を見ていることに気が付いた黒縁眼鏡の青年が再び話し掛けてきた。
「え、あ、あの……」
しかし私はさっきのショックがまだ残っていたのか、上手く声が出せなかった。
「まぁ、そんなことはどーでも良いや」
私の返事も待たずに黒縁眼鏡の青年は一度、どうでも良さそうに手を振ると、再び微笑んで、
「……突然ですがお嬢さん。俺達と旅をしないかい?」
────私は、あまりの急展開にまったく付いていけず………
「えっ!?ち、ちょっとちょっと!?」
黒縁眼鏡の青年のその言葉を何処か遠くで聞きながら、気絶してしまった。
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