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彼は、無言の帰宅をした。今までとは、全く違う帰宅の仕方である。
家族は、葬儀の準備に忙しくしている。彼の側には、彼女が付きっきりだった。冷たくなった手を何度も握り返した。そして
「夢…実現出来なかったね。辛かったでしょ。悔しかったでしょ。これからは、私の為に頑張ってくれた分、精一杯休んで。貴方の事を、生涯忘れる事なく、私なりに幸せを掴むから。いつか、私が貴方の所へ行くまで、待っててね。そして、一緒に産まれ変わったら、その時、結婚しようね」
と、体を震わせ、涙を浮かべながら、返事が出来ない彼に誓った。
葬式当日。
社長が会社の代表として参列した。社長は家族に伝えた
「これは、会社からの精一杯の気持ちです。」
と、香典と彼が使用していた仕事道具。そして、彼の仕事に対する功績を称えた賞状と、従業員からの寄せ書きが渡された。
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