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視線の先に、彼女がいる。
目で追っていると気がつくのに、それほど時間はかからなかった。
心に芽生えた感情を自覚しても、それを言葉にする日は絶対に来ない。
何故なら、もう決まっているから。
何って、フラれることだよ。
――2年半前。
初々しさ満点の高1の春。
知らない面子が大半で、誰もが浮足立っている中、2人は重苦しい空気を纏って教室に入ってきた。
笑顔、なし。
会話、なし。
はて、どうしたものか。
1人は松葉杖ついて、もう1人は俯き加減にその横を歩く。
ただならぬ空気が、逆に俺の興味をそそった。
訳あり……?
まぁ、一緒に歩くって事は、初対面なわけないし、つき合い始めにしちゃ、何か重いんだよね。
窓際から出席番号順だから、席が近い。
俺――笠野 仁志(カサノ ヒトシ)
その後ろ――紀本 彬(キモト アキラ)
2列目中央――杉崎 真由利(スギサキ マユリ)
こんだけ近けりゃ、何らかの関わりが生まれるだろう。
何より、訳ありな空気が気になるし。
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