あと数センチ……。

2/16
前へ
/17ページ
次へ
   視線の先に、彼女がいる。  目で追っていると気がつくのに、それほど時間はかからなかった。  心に芽生えた感情を自覚しても、それを言葉にする日は絶対に来ない。  何故なら、もう決まっているから。  何って、フラれることだよ。  ――2年半前。  初々しさ満点の高1の春。  知らない面子が大半で、誰もが浮足立っている中、2人は重苦しい空気を纏って教室に入ってきた。  笑顔、なし。  会話、なし。  はて、どうしたものか。  1人は松葉杖ついて、もう1人は俯き加減にその横を歩く。  ただならぬ空気が、逆に俺の興味をそそった。  訳あり……?  まぁ、一緒に歩くって事は、初対面なわけないし、つき合い始めにしちゃ、何か重いんだよね。  窓際から出席番号順だから、席が近い。  俺――笠野 仁志(カサノ ヒトシ)  その後ろ――紀本 彬(キモト アキラ)  2列目中央――杉崎 真由利(スギサキ マユリ)  こんだけ近けりゃ、何らかの関わりが生まれるだろう。  何より、訳ありな空気が気になるし。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加