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全力で走り続けるエイビドゥだが、明らかに彼の向かう方向はおかしかった。
何故なら先ほどの衝撃音は学園の外から響いていた。しかし、この学園には出入口となる門がたった二つしかない。
エイビドゥの進む先は確かに音のした方ではあるが、その先には門はなく巨大な壁しかないのだ。
案の定、彼は壁の目の前で立ち止まるはめになってしまった。
「おいおいエイビドゥ。こんな時に迷子かよ」
呆れたようにアゼルがそう言うとエイビドゥは
「いや、ここでいいんだ」
彼はそう言い両手を胸の前で構え、意識を集中し始めた。
「なるほどな……」
――やっぱりこいつ、ただの馬鹿じゃねえな。
「いくよ、アゼル」
「OK。しっかり魔力をためとけよ」
次の瞬間、アゼルはエイビドゥの目の前で全身ひろげて、自らの体とエイビドゥの体を少しずつ重ねていく。
「今だ!! エイビドゥ」
アゼルの合図と同時にエイビドゥから弾けるように貯めた魔力が飛び出し、発光した。
そして、光がおさまるとそこにはアゼルの姿はなく、壁を前にエイビドゥただ一人立っていた。
「出来た……のかな?」
――ああ、バッチリだぜ。
「!?……頭の中で声がする」
――驚く暇があるなら、とっとと行くぞ。
「あ、うん……なら、翼。そう翼がいる」
――じゃあ、背中に魔力を集めて翼を望め。そうすりゃ生えてくる。
「わかった……」
魔力が集められているからなのか、彼の背中がわずかに輝いて見える。
すると、再び魔力が弾け光を発し、光の後には漆黒の両翼がしっかりと彼の背中にはえていた。
「よし!!」
――この壁を越えたら、ファントムだぜ。
「わかってる」
そして、少年は漆黒の両翼を羽ばたかせ空を舞う。
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