†第一章参幕目† 『大切なものと守る為の力』

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   バサッ、と翼が羽ばたく音がした。それは俺の背からではなかった。   けれど、その音が聞こえたと同時に俺の体は誰か抱き抱えられており、地面には間一髪叩きつけられずにすんだ。   そして、俺はゆっくりと恐怖で閉じた目を開けた。  「……羽? 」  すると、目の前を覆っていたのは宙を舞う無数の白い羽。   白い洋風な法衣を身に纏った金髪の男が俺を抱えていた。  「ご無事ですか?」   男がそう聞いてきた。  「まぁ、なんとか」   左半身以外はだけど…………ね。  「エイーー!!」 「エーーイビ!!」   大きな声でエイビドゥを呼びながら、駆け寄ってくるシーフェとルーティ。 「二人共なんで……?!」  エイビドゥは目を丸くしながら聞くと二人はほぼ同時に答えた。  「友達一人を行かせるわけにはいかないから」   二人の瞳に先ほどまで彼らを支配していた曇りはなかった。  「では、我が主。ルーティン・ガド・マルフ。次の願いは?」  金髪の男はエイビドゥを優しく地面に置くと、ルーティにそう言った。 「彼女の天使と協力して、ファントムの討伐もしくは封印してくれ。 我が契約者。 天使エルト・マ・ライカス」  すると、エルトなる天使は再び翼を羽ばたかせ、ファントムの元に向かう。  「……あれ?もう一体天使が」  ふと、エイビドゥがそちらを見てみると、すでにファントムと戦っている白い翼の天使がいた。 エルトと同じく髪は金色だ。  「あれはね、私の契約者。天使リファル・ディ・ファシーなの」  シーフェが不思議そうなエイビドゥにそう言うと彼は納得したらしく頷いた。  「ぐっ……」    少し落ち着いてきたせいかしばし忘れていた激痛が再びエイビドゥを襲う。 「痛いの?エイ。……待ってて、今少しだけ楽にしたげるから」   シーフェはそう言うと横たわる彼の左腹部に両手をかざした。  「我、天使リファル・ディ・ファシーと契約を結ぶ者なり、神と天と地の名において望むは彼に癒しの恵みを…………我が名はシーフェミファ・ライト・オーフェン」   彼女の詠唱が終わるとエイビドゥの体と彼女の両手に淡い光が発生し、それが彼の傷口に集まり、彼の体の中に吸い込まれていった。   骨は治ってはいないようだが、エイビドゥは確かに先ほどよりも痛みが和らいだのを感じた。
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