†第一章参幕目† 『大切なものと守る為の力』

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  何だよ……これ?   エイビドゥは目の前の信じがたい光景に言葉を失っていた。 「ぐ……がっはぁ」  天使エルトは全身から血を流し、地に伏せていた。流れる真っ赤な血に白き翼を赤く染めて。  「エルト!?」  ルーティがエルトに駆け寄ろうとしたその時、ファントムの触手がルーティに襲いかかる。  「危ない!!」  とっさにシーフェがルーティと触手の間に立つ、すると、今度はシーフェとファントムの間に天使リファルが立ちふさがり、魔力を集中させ結界をはり、ファントムの触手を受けとめる。  「な、なんて力だ。……このままじゃあ長くはもたない!!  我が主シーフェミファよ、彼らを連れてお逃げください!!!!」   リファルの判断は懸命だったがしかし、ファントムがそれを許しはしなかった。  パリン   音をたてて、結界は破られ、リファル自身も触手に叩き飛ばされた。  「あ……あ。いや、いや来ないで!!」  シーフェの顔が恐怖に染まる。ファントムはまるでその恐れる様をもてあそぶ様にゆっくり……ゆっくりと二人に近寄る。   ニ体の天使がいながら、たった一体のファントムに敗北する。  そんな結末をシーフェもルーティもエイビドゥすらも考えてはいなかった。   三人の心にあった唯一の油断。戦う力を勝つ力と勘違いしたこと。     今彼らは何故人々がファントムを恐れ、忌み嫌ってきたのか? それを見せつけられていた。   人の力を越えた存在。人の命を搾取する存在。人の恐怖を生み出す存在。      【ファントム】  それが彼らの心に深く刻まれた瞬間だった。    「このまま、じゃあ」 ――確実に二人共殺されるだろうな。  「アゼル、翼を作って二人を助けに……」――無理だな。 「どうしてだよ!?」 ――お前の体は今、あのお嬢ちゃんの魔力で痛みを和らげているだけで、動ける体じゃない。  助けに行ったところで三人まとめて殺されて終わりだ。 「なら…… …………アゼルが行ってよ」   ――お前、その意味わかってんのか?   「代価でしょ?・・良いよ、好きな部分持ってけよ…………代わりに二人を」 ――本気……なのか? 「早くっ!! 二人がやられる前に!!」  エイビドゥの瞳に恐怖は無かった。  あるのはただ光だけ。  友達を守りたいという思いだけ。 
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