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ファントムのその触手と凶悪な姿はなめらかに動くことで、より不気味さと醜悪さを増していく。
迫る闇に少女は恐怖する。一瞬にして闇は彼女から涙すら奪い尽くす。放心状態となり、虚ろな瞳の少女は死を覚悟した……覚悟せざるおえない状況下に置かれたために。
しかし、そこで闇は止まった。いや正確には止まったわけではない。だが、少女には止まったように感じた。
一瞬、されど流れるように彼女の瞳にうつる世界が赤と黒に染まる。
そして、感じる。強大な魔力を、彼の魔力を。
彼女が魔力の元を見つめる。そこに立つは紛れもなくエイビドゥそのもの。傷つき、立つこともままならなかったはずの彼がこちらに歩み寄る姿。
「エ……イ?」
「………………」
シーフェから擦れて消えそうな悲痛な声聞こえる。
沸き上がる怒りと力。
俺は許せない。奴を……ファントムを。
シーフェ達を傷つけたファントムが許せない。
彼女の悲しげな顔は苦しい。
だから、俺は呼ぶ。
――あいつを。
「…………我、誘うは永久の焔と闇に身を墮とす者なり。
……神を仇なし
……夜を好み
……強欲に力を求める。
我が血と肉を捧げ……
……今一時門を開く。
その姿を顕現せよ。
――悪魔……
【アジューガゼル・ジ・カオス】」
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