†第一章参幕目† 『大切なものと守る為の力』

10/11
前へ
/85ページ
次へ
 ファントムのその触手と凶悪な姿はなめらかに動くことで、より不気味さと醜悪さを増していく。   迫る闇に少女は恐怖する。一瞬にして闇は彼女から涙すら奪い尽くす。放心状態となり、虚ろな瞳の少女は死を覚悟した……覚悟せざるおえない状況下に置かれたために。     しかし、そこで闇は止まった。いや正確には止まったわけではない。だが、少女には止まったように感じた。      一瞬、されど流れるように彼女の瞳にうつる世界が赤と黒に染まる。   そして、感じる。強大な魔力を、彼の魔力を。   彼女が魔力の元を見つめる。そこに立つは紛れもなくエイビドゥそのもの。傷つき、立つこともままならなかったはずの彼がこちらに歩み寄る姿。  「エ……イ?」 「………………」 シーフェから擦れて消えそうな悲痛な声聞こえる。  沸き上がる怒りと力。  俺は許せない。奴を……ファントムを。  シーフェ達を傷つけたファントムが許せない。  彼女の悲しげな顔は苦しい。  だから、俺は呼ぶ。  ――あいつを。  「…………我、誘うは永久の焔と闇に身を墮とす者なり。 ……神を仇なし ……夜を好み ……強欲に力を求める。  我が血と肉を捧げ…… ……今一時門を開く。  その姿を顕現せよ。  ――悪魔…… 【アジューガゼル・ジ・カオス】」
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加