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「ふぉっふぉ。お疲れのところすまんが話をさせてもらってもよいかな?」
いつの間にか部屋の扉の前に老いた男が杖を正面について立っていた。
「……っ?!」
「が、学園長?!」
「ふぉっふぉ」
エイビドゥとシーフェは目を丸くしてパクパクと口を動かして驚いていた。
アゼルはただ沈黙したまま、室内に入ってきた老人の男を見ている。
「よろしいかな?」
「は、はい!!」
シーフェがビシッと背筋を伸ばし返事をした。
「では、そうじゃなエイビドゥ」
「……はい」
真剣な空気が場に広がる。
「ぬしは、悪魔と契約したそうじゃな」
「はい。それがこのアゼルです」
「なるほど。素晴らしい……恐ろしいほどの魔力を秘めた悪魔じゃな」
「……ほぅ、爺さんわかるのか?」
アゼルが学園長に始めて言葉を返す。
「秘めたる力を地獄に隠し置いたとて、エイビドゥの魔力を一切借りずに肉体をこちらの世界に保っておる。それだけでも並の悪魔ではなかろう?」
どこか不適な笑みを浮かべ、アゼルに問う学園長。
「……へえ」
アゼルも不適な笑みを学園長に返した。
「ファントムを滅することが出来たのも理解可能じゃが…………アゼルとやら真降名は何という?」
「答える必要性は?」
アゼルが冷たい口調で言う。
「汝の真降名次第でエイビドゥの処置が決まる」
「処置?」
「学園長、エイの処置っていったい!?」
シーフェが声荒げ学園長とアゼルの会話に乱入する。
一瞬、シーフェをちらと一睨みだけし、学園長は再びアゼルに問う。
「汝の真降名はいかに?」
「アジュー……アジューガゼル・ジ・カオスです」
アゼルではなくエイビドゥが震えた声で答えた。
「ドアホ!! 何答えてやがる?!」
アゼルがエイビドゥを怒鳴り付けた。
「やはり……か。……カオスの名を」
学園長は表情を曇らした……が既にそれを知っていたかのような様子だった。
「カ……オス?」
シーフェの表情が凍りつく。場に重苦しい空気と沈黙が冷たい結界をはる。
「――アジューガゼル・ジ・カオス。【邪神カオス】の名を持つものか」
学園長が重く真実を言い放つ。
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