†第一章壱幕目† 『過去を失いし少年と強欲なる悪魔』

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 ガチャンという音とともに魔文字の刻まれた扉が開き、部屋からエイビドゥと、悪魔がエイビドゥの頭に乗ったまま出てくる。  「はぁー…」  少年はため息をつき、憂鬱な表情をしている。すると、エイビドゥを見つけて走り寄ってくる少年と少女が二人。  「おーい、エイビ!!」 「エイーー!! 契約どうだったの?」  エイビドゥは二人に気づくと少し晴れた表情を見せた。  「おー、シーフェにルーティ」  エイビドゥの心なしか元気のない声に疑問を抱く二人。  「どうしたの? エイ……ってその頭の上にいるのがエイの契約者?」  先に口を開いたのはシーフェと呼ばれる緑の長髪の少女だった。  「てか、エイビ……まさかそれって………悪魔?」  ルーティと呼ばれる銀の短髪をした少年はあきらかに引きつった笑顔を見せながら、エイビドゥに問い掛けた。   すると、エイビドゥは「うん」とうなずき、「もっとかっこいいのが良かった」と愚痴るのだが、ルーティとシーフェも完全に血の気のひいた顔をし、エイビドゥの愚痴などまるで聞いていない。  「でさー…? 二人共聞いてる?」   エイビドゥはやっと二人が自分の話を聞いてないことに気がついた。  その言葉に二人は顔を見合わせ「……まさかな」と呟いた後に少しエイビドゥの方にルーティが歩み寄り、真剣な顔でエイビドゥに話しだした。 「な、なぁ。エイビドゥ……まさかとは思うんだけどー…天使と悪魔の契約の大きな違い三つ知ってるか?」   エイビドゥは一瞬固まりすぐにまた気の抜けた声で喋りだす。  「えっとな、第一に使う力が極端に悪魔は多いと……第二に、具現化と一体化の二つの使い方しかない。第三はー………なんだったっけ?」    エイビドゥのその言葉に二人は頭を抱え「やっぱり」と言って呆れ果てた。  「エイそれが一番大事なの!!」   いきなり、エイビドゥに怒鳴るシーフェだが、エイビドゥは不思議そうな表情を見せる。  「はぁー。教えてやるよエイビ」 「なんだよ。早く言えよ」  エイビドゥは呑気にも笑顔で急かしていた。 「悪魔はなぁ、天使と違って、その力を使う時に魔力ともう一つ対価を払わなきゃいけないんだ」 「ふーん。対価って?」 「自らの体の一部だよ」 「……え?」  固まり今度は微塵も動かず、表情も驚きに満ちて唖然とするエイビドゥ。
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