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エイビドゥが契約を終えたその日の夜。
彼が悪魔を連れて歩いていたところを見た数人の生徒達から他の生徒達に瞬く間に噂は広がっていった。
その頃、エイビドゥは自分の部屋で窓から見える月をベッドに横になりながらじっと見つめていた。
「……はぁ」
「んー? どうした我が主よ」
エイビドゥのため息にすぐ反応する猫姿の悪魔。
「どうしたもこうしたもないよ」
「まさか、まだ俺と契約したこと悔やんでんのか?我が主よ。そんなに嫌なら最初から結ぶなよ」
「てかさー、その我が主って呼ぶのやめてくんない?
俺はエイビドゥ……エイビドゥ・ブリーク・フールって名前があるんだから」
「これは失礼エイビドゥ」
(よ、呼び捨て!?)
「最初から結ばなきゃ……ってまさか、悪魔の力にそんな誓約があるなんて知らなかったんだもん」
「おや、エイビドゥ。俺には名前で呼ばせといて自分は俺の名を聞こうともしないのか?」
そう言うと悪魔は肉球のついた手をエイビドゥに向けた。
すると、突然エイビドゥが頭をおさえ痛がりだした。
「痛い痛い!! いだぁぁあーーいぃぃ!!」
その様子を少し見た後、悪魔は手を下ろした。
それと同時にエイビドゥも痛がるのをやめた。
「はぁはぁ‥‥いってぇー」
「礼儀ってもんは必要だからな。親しき中にも礼儀ありってな」
くそったれこの野郎と言い放ちたいエイビドゥだが、言って再び苦痛を味わいたくないので心で小さく呟くだけですました。
「で、お前の名前なんなんだよ?」
やっとエイビドゥが悪魔に問い掛けた。
「教えない」
あっさり断る悪魔。
「はあ!?なら、何であんな痛いめに俺が!!??」
思わず怒鳴るエイビドゥ。
「うるさいなー。そうだな……あえて呼ぶならアゼルとでも呼んでくれ」
「アゼル?」
「そうアゼルだ。よろしくエイビドゥ」
「ん‥‥? あぁ、よろしく」
いつの間にか普通に挨拶を交わし終えた二人。
すると、二人の足下を魔方陣が囲いだし発光し、キィンと不思議な音が鳴り響いた。
「……なんの音?」
「よし、契約完了だな」
ご機嫌な様子の悪魔。
「契約完了‥‥て、どういうこと?」
「だから、今までのは仮契約だったのが今ので本契約になった。つまり、もう契約解除不可ってことだ」
「う、嘘だぁぁぁぁーーーー!!??」
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