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学園の廊下を不機嫌そうな表情で歩くエイビドゥとその頭上で気持ちよさそうに眠るアゼルがいた。
周りにはたくさん生徒達がいて、彼らはエイビドゥの頭上のアゼルを見て口々に言った。
「あれって悪魔じゃね!?」
「えぇ、嘘ーー!?」
「悪魔なんかと契約するとか……あいつ勇気あるよなー」
「さすが、“ブレイクフール”だよな」
「けど、何か……怖い」
その数々の言葉とエイビドゥに向けられる異端なものへの視線が彼の不機嫌な表情の原因であることは明確だった。
「ふんっ……」
エイビドゥの不機嫌な態度に気付き顔をあげるアゼル。
「どうしたんだエイビドゥ? ずいぶんと苛立ってるじゃないか…………ケケ」
「アゼルは黙っといてよ」
「んー? 俺様にそんな口聞いていいのかなー」
小さな前足にわずかに魔力を集めるアゼル。
「ぐっ……!?」
アゼルの脅しに屈し、悔しげに怒りを抑えこんだエイビドゥだった。
しばらく、歩き続けてエイビドゥは立ち止まった。
目の前には大きな装飾扉。その扉の上には“第Ⅴ図書室~契約と制約~”と刻まれていた。
アゼルは面白そうにその文字を見ていた。
(なるほど、制約か。……軽はずみに契約したぐらいだから余程の馬鹿かと思っていたが、中々賢いじゃないか)
ギィィとエイビドゥはその大きな扉を開き中へ入っていった。
部屋の中では一番手前のテーブルの所で先に来ていたシーフェとルーティが幾つかの本をテーブルにひろげていた。
「よう!! お二人さん、ごきげんよう」
一番初めに口を開いたのはアゼルだった。
「あ、エイビドゥ来たのか」
「ちょっと遅かったね」
二人はエイビドゥ達に気づきそう話した。
「だって、皆がこいつを見るたびにさー……」
「ま、まぁとりあえず座ろうよエイ」
シーフェは椅子に座るようエイビドゥに促した。
ここに来るまでにエイビドゥがどんな風に見られ、どんなことを囁かれていたのかなど、聞かずともシーフェとルーティにあらかた予想がついていた。
それぐらい、悪魔と契約することはこの学校では前代未聞なことなのだった。
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