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たくさんの本から二人が調べた対策をエイビドゥに丁寧に一つ一つ説明している。
「だから、制約ってのはある条件を決めてだな代償を減らすんだよ」
ルーティが懸命に砕いて話すが、普段から講義を夢の中で過ごしてきたエイビドゥに教えるのは至難の技だった。
その証拠にエイビドゥの顔は口を半開きで呆然としている。
その様をアゼルは彼らの頭上をプカプカと優雅に浮かびながら、何とも気難しい様子で見ていた。
(さっき、一瞬でも感心した俺様が情けない…………このガキ、本物のアホだ)
シーフェも目を空に泳がせて、よりエイビドゥが理解しやすい言葉と例えを探していた。
「つまりだなー……よし!なら、具体例で説明してやる。魔行挟縮(マコウキョウシュク)だ」
ルーティがやっと最適な説明方法を思いついたらしく、普通ならば皆が知っているがエイビドゥには聞き慣れない言葉を具体例に上げて説明し始めた。
「エイビドゥ。今、この悪魔は――「アゼルだ」
「はい……?」
「だから、俺様の名前はアゼルだ」
「…………つまりだ、このアゼルが今こっちの世界に肉体を具現するにはお前の魔力を吸っているんだ。ここまではわかるな……?」
途中、アゼルに話を遮られながらも臨機応変に対応し、話を再開する機転の良さからルーティの利口さが伺えた。
「イエス、理解可能であります」
真剣なルーティ達に比べ、依然ふざけ混じりのままのエイビドゥ。
「その、アゼルを具現している魔力を制約して減らすんだ。そうすれば、強い力が使えなくなるが肉体の一部を奪われることはなくなるはずだ」
「なーるほど。では、早速……」
「せっかくの提案に水をさすようで悪いが魔行挟縮は既に俺様でコントロールして制約済みだ。俺様を完全に具現すれば、エイビドゥの魔力など一瞬で尽き、命を失いかねんからな。まぁ、しかし俺様はこの姿でも力は使えるからエイビドゥが俺様の力を借りれば代償は頂く」
「………………」
アゼルの言葉を聞いて愕然とする一同。
「……おいおい、そこまで落ち込むなよ一同。悪魔から提案とはおかしな話だが……代償無しで力を使う方法あるぞ」
「……!? ……マジで?」
「嘘言って、どうする?」
「それもそうだな」
お気楽なエイビドゥに今度はアゼルまでもが、しばし言葉を失う。
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