序章 プロローグ

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  「お母さん?」 お家を出ちゃ駄目って言われたけど お母さんを探しに外に出たの。 そしたらね 私が住んでた町がボロボロになっててね。 周りの森が紅く燃えてて…… そこで沢山のお友達が寝てたんだ。 お友達からは赤い絵の具が出ててね。 私はお友達を起こそうとしたの。 「風邪引いちゃうよ!」 って言ってもね。 お友達、動かないんだ。 光になっちゃったの。 沢山あった光が消えちゃった。 小さい光も、大きな光も、消えちゃった。 とっても悲しかった。 だからね、私、お母さん探したの。 悲しかった時は、いつもお母さんがギュッとしてくれるの! お母さんの匂いがして、とっても安心するんだ! お母さんすぐに見つかった! でも、お母さんも動かないんだ。 赤い絵の具が身体中から流れててね。 お母さんの光……感じられないんだ。 お母さん……動いてよ。 悲しいよ。 苦しいよ。 寂しいよ。 怖いよ。 お母さん!お母さん!! またギュッてしてよ! 「ひっく……うぐっ……」 泣いてたら、お母さんが手に何か握ってるのに気付いたの。 私はそれを取って見たんだ。 それはお母さんが大事にしてた宝物。 いつも肌身放さず持ってた宝物。 お母さんは〔神様の証〕って言ってた。 お母さん。 お母さんは光になっちゃったんだね。 皆光になっちゃったんだね。 私はまだ光になってないよ。 ここにいるよ。 あんなに青かった空は…… いつの間にか黒い空になってた。 空には弱々しく蝶が飛んでいた。 黒い羽の美しい、弱った蝶。 行き場がなく、死に場所を求め。       遠くの空に消えてった……。     ――― ――――― ―――――――…              
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