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私が小学校低学年から使っていた抱き枕。
くまの大きなぬいぐるみの形をした抱き枕。
私はもう高校生。
来年から、大学生になる予定。
でも、今でも使っている抱き枕。
彼はいつでも傍にいてくれた。
眠い時、部屋でのんびりしていたとき、親に怒られて泣いたとき、寒い時…
彼は涙を拭いてくれた。
その柔らかいタオル生地で、優しく涙を拭いてくれた。
彼は温めてくれた。
熱を含む、その優しい綿をもって、温めてくれた。
彼は安心感をくれた。
その優しい表情で、安心させてくれた。
彼はもう、年老いてしまった。
ずっと抱き締めていた部分だけ、綿が別れてしまった。
手を回していた背中が、ハゲてしまった。
色んな繋ぎ目から穴が開いていった。
何回も縫い直したけど、ついには布が薄くなって破れた。
綿だって、もうしなびて、ぺしゃんこになっている。
それでも彼は私の傍で涙を拭いて、温めて、笑ってくれている。
皆は彼を「捨てろ」と言った。
どうしてそんなこと言うの?
彼は私にとって、かけがえのない人なのに。
私の大切な使い古した友達。
あなたがもう、どうしようもなくなってしまっても
私はあなたと一緒にいたい。
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