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見上げる月は見事な真円。
青白い光が、寒々とした空気を、さらに凍てつかせるようだ。
路地裏の道端には、打ち捨てられた死体のような…少年。
泥と血にまみれた傷だらけの体は、擦り切れたぼろ布を彷彿とさせる。
少年は疲れきった様子で、深紅に濡れた顔をわずかに持ち上げる。
腐肉のような体臭が、近づいて来ていた。
奴隷商をなんとか振り切ったものの、隠れようとした廃棄物の小山から、動けなくなってしまったのだ。
自分を探す足音が近づく。
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