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「卒業までの間、愛人になって」
「は…?」
唐突過ぎる申し出に、十河 朔良(トガワ サクラ)はかけていた黒ぶちの眼鏡を外して眉根を寄せた。
「俺、彼女いるけど」
「知ってる。だから、愛人、なの。卒業したら綺麗サッパリ忘れてくれて構わない。私から声かけたりしない。十河くんが私を必要だと思った時に、連絡くれればいい…」
まっすぐに朔良の目を見て言い切ると、蔵本 綾花(クラモト リョウカ)はメモを差し出した。
「それ、私のアドレス」
「急に貰っても迷惑」
「うん。承知の上で言ってる。十河くんが私のこと必要になる日がくるかわかんないけど、ずっと好きだったから、言っておきたかったの」
綾花のストレートな物言いに、朔良は読みかけの本を静かに閉じた。
「俺、芹佳(セリカ)と別れる予定ないけど」
3人とも同じクラスで、その中で三角関係など、面倒なことこの上ないと、朔良は冷ややかに綾花を見下ろした。
そう言われるのを予想してか、綾花の態度に変化はない。
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